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ところの絵がそれです。暇な人とか行き場のない人(これ、自分のことなんですけど)を訪ねてきてくれる〝ぶさいくな猫〟がどんな顔をしているのかな、そんな猫がいたらいいなって書いてみた絵でした。ーモデルになった猫や人物は?25年くらい前、1階に茶の間があって2畳くらいの庭がついている小さな一軒家を借りて暮らしていたことがありました。そこが、〝野良猫が寄っていく家〟だったんです。猫を飼っていたわけじゃないんですが、いろんな猫が入れ代わり立ち代わり現れて、人懐こい猫だと、へー。で、定規も持っていなくてフリーハンドで(笑)。今後の生活についてあきらめなくちゃいけないこととか、出来なくなってしまうことが出てくるのかなとか、本人はどれだけ不安だろうと思ったんです。それで、「ま、生きてればいいよ」ということを伝えたかった。それが『夜廻り猫』の1話目です。「何の4コマがいい?」と聞くと、「あの怖い顔の猫の話でいいよ」って。3年くらい前に、猫の上半身だけの絵をかいて、失敗したなと放り出して廊下の隅に置いておいたんです。単行本の1巻のめくってすぐのひとりじゃないよ、『夜廻り猫』のいる風景こうなってるんだー」「元気?」みたいな感じで毎日、決まった時間にやってきて部屋に入って一回りして、夜8時になったら出ていく(笑)。本当に不思議なんですけど。初めにその猫が来た日は、雨がザーッと降っていて、私がテレビを見ながらガラス戸にもたれていたら、とんとん、ってガラス戸を叩く音が。え?と思って開けたら、すとって上がってきて。びっくりしましたね。ーまるで『夜廻り猫』ですね!何匹かそういう子がいたんです。もしかしたら、私の前の住人がとても猫好きの優しい方で、えさをくれたからとか、そういうこともあるかもしれません。猫って絵を描くのが難しいので、苦手意識があったんです。息子にあの猫の話でいいよって言われなかったら描こうと思わなかったと思います。単行本にする時に校正者の方にチェックしてもらうんですけど、100ヶ所くらい赤が入ります(笑)。体の模様なんて、逆を塗っちゃったり。でも、うまくはならないですけど、猫を描くのは楽しいです。ちょっと人間に寄り過ぎではあるんですけど(笑)。あと、これは後付けなんですけど、主人公が猫でよかったなって。人間にはちょっと言いにくいことが猫には言えるというか。ー今回、横浜駅に掲出した「言葉のお守りキャンペーン」の『夜廻り猫』のポスターのツイートにも〝いいね〟を1200件以上いただき、「平蔵さんの言葉に救われた」「泣きそう」という声も。多くの方に「必要とされている」作品なんだということが伝わってきます。ありがとうございます。いつも作品をアップするとすぐに〝いいね〟とか、コメントが来るので、それが嬉しくて書いてるようなものです。そもそも、「Twitterにあげてみたら?」というのも息子が言ってくれて、「どうやるの?」というところからはじめたんですが、反応がゼロだったらその1回でやめていたと思います。0代、9一番小さい方はサイン会に小学生のきょうだい二人で来てくれたり、0代の方からお手紙上の方は8を頂いたり。不思議なことに最初から、「やめないでください」と言っていただくことが多く、続けてほしいって言っていただけるのが本当にありがたいです。3フォーラム通信2021夏秋号