「フォーラム通信」2023年冬春号

「横浜から男女共同参画社会の実現を考える」。公益財団法人横浜市男女共同参画推進協会が発行する広報誌です。2023年冬春号の特集は、「私、の痛み~痛みのジェンダー・ギャップ~」「家庭科教師で野球部監督で」。連載は「地球で行きてる私たち」。


>> P.4

特集1私、の痛み〜痛みのジェンダー・ギャップ〜と伝えたら、「(陣痛は)耐えなきゃしょうがないでしょ。お母さんはみんなそうやって強くなっていくんだから」と一笑に付されたことがありました。子育てする強さが陣痛の我慢によって得られるなら、父親は麻酔無しで親知らずを抜くぐらいしないといけないのでは?と納得がいかなかったことを覚えています。日本では子供のためにすべてを犠牲にする母親像が美徳とされているために、陣痛に限らず、母親が痛みや苦労を回避しようとしてはいけないという価値観が根強くあります。進行する少子化は、若い女性がそれらを敬遠した結果という面もあるのではないでしょうか。◆アクセスしづらい経口中絶薬と緊急避妊薬本書では触れられていませんが、日本は人工妊娠中絶において、WHOが「体と心への負担がより少ない」として推奨する安価な経口中絶薬がなかなか認可されず、金属製の器具で子宮内をかき出す危険な掻そう把は法がThePainGapフォーラム通信2023冬春号4ことには可視化されず、改善も進みません。ヒステリーと言われるのを恐れることなく、むしろそれを「自らの健康のために自己主張する手段」ととらえ、積極的に声をあげていこう、というのが著者の意見です。自分の体がどのように痛むのか、どのような苦痛をこうむっているのか、一番よくわかっているのは自分自身なのですから。ただ、声を上げるには知識と、無視されてもひるまない自信が必要です。第9章の「自分の声を届ける」では、自分の声を聞き入れてもらうために女性患者が取れる手段について、さまざまな識者の意見をまじえつつ紹介されています。これまでの健康診断の結果や既往歴といったデータをまとめておいたり、信頼できるかかりつけ医に代弁してもらうのも、取れる方法の一つだそうです。「もうこれ以上黙って耐え続けることはできない」という女性に、ぜひ読んでいただきたいです。いまだ現役であることも、多くの識者が問題視しています。婦人科検診の痛みに麻酔が適用されにくいことも含め、女性特有の痛みは黙って耐えるのが望ましいという認識のあらわれといえるでしょう。世界各国で市販されている緊急避妊薬(アフターピル)も、性交後72時間以内に内服する必要性があるにもかかわらず、日本では市販が認められていません。この件に関し、テレビ番組で日本産婦人科医会の男性幹部が「日本の若い女性は性教育が不十分だから安易に緊急避妊薬に流れる」という主旨の発言をしたことが話題になりました。女性の苦しみが放置されやすい背景には、女性は無知だから自分の体をコントロールする権利を与えてはいけない、という価値観もあるのかもしれません。◆どうすれば改善できる?著者は「ヒステリー」の声を活用しよう、と女性たちに呼びかけています。女性は痛みや不満を表明すると「ヒステリー」と揶揄されがちです。そのため、多くの女性は感情を抑え込まざるをえないのが現状でしょう。ただ、痛みは声に出さない


<< | < | > | >>