>> P.2
◆どういう本?痛みやつらさを訴えたとき、「おおげさだなあ」「気のせいじゃない?」「お母さんならそれくらい我慢しなきゃ!」「(生理痛は)子どもを産めば治るから」などと言われて、とりあってもらえなかった経験のある女性は多いのではないでしょうか。対処してもらえないなら黙って耐えるしかない、と一人で不調を抱え込み、病状を悪化させてしまうという話もよく聞きます。本書はそういった女性の痛みが軽視されやすい傾向を数多くの統計や事例などによって実証し、問題提起している本です。このような本がアメリカから出版されるのも、女性、とくに有色人種の女性の痛みが医療現場で無視されやすいために引き起こされる健康被害が、コロナ禍でますます無視できないものとなっているせいでしょう。アメリカは先進国のなかで妊産婦死亡率が最も高い国なのですが、有色人種の女性が妊娠関連で死亡する確率は、白人女性の2〜3倍にものぼるのだそうです。著者自身、バングラデシュ出身の有特集1私、の痛み〜痛みのジェンダー・ギャップ〜寄稿堀越英美さん2022年10月に刊行された医療ケアにおける性差別や人種差別に切り込んだルポルタージュ『「女の痛み」はなぜ無視されるのか』(アヌシェイ・フセイン著、晶文社)が話題です。訳者の堀越英美さんに、本の内容や日本での事例について、ご紹介いただきました。『「女の痛み」はなぜ無視されるのか?』アヌシェイ・フセイン著、堀越英美訳(2022、晶文社)フォーラム通信2023冬春号2色人種の女性です。アメリカでの出産時に痛み止めが効いていないと訴えても無視されてしまい、後遺症に見舞われたことからこの問題に注目したといいます。また、バングラデシュ時代に、自分を育ててくれたナニーを出産事故で失った経験の持ち主でもあります。◆痛みの訴えを信じてもらえない「信頼ギャップ」女性が医療制度で直面する問題は、大きく分けて「信頼ギャップ」と「知識ギャップ」があると本書のなかで語られています。信頼ギャップとは、女性が人格をもった存在として扱われず、症状や痛みを訴えても医師に信頼されにくいという問題です。「その症状はよくあることです」「大したことじゃない」などと言われたり、ストレスなどの心理的なものとして扱われて治療されないといった事例がそれにあたります。本書には、思春期の頃からの生理痛を放置され続けて、子宮内膜症になった女性司会者の事例が紹介されていますが、これは日本でもよく聞く話です。また、女性は男性よりも鎮痛剤を投